シクラメンの白さを、焦がさず木に残したかった
冬になると、街のあちこちでシクラメンを見かけます。
華やかな花なのに、どこか静かで、近くで見ると清しい。
この時期の空気によく似合う花だなと思います。


きれい、だけでは終わらない花
私はシクラメンを見ると、まず花びらの流れに目がいきます。
中央から外へ向かってほどけるような線。
重なりながら、やわらかく反り返っていく形。
可憐というより、少し凛としていて、その曲線に惹かれました。
ねじれたような花びらや、葉の色、根元の力強さまで含めて、シクラメンは意外とワイルドな花でもあります。
でも今回は、その力強さよりも、清しさや美しさの方をすくい取りたいと思いました。



焦がさず残したかった白さ
今回いちばん強く思っていたのは、花びらを焦がしたくない、ということでした。
木型として考えると、もう少しはっきりした彫りや焼き色があった方が実用的なのかもしれません。
それでも、シクラメンの花びらだけは、木そのままの色で残したかったのです。
背景を一段落として暗くし、花びらの部分だけを明るく残す。
そうすることで、真綿色の静かな白さが、少しでも伝わればと思いました。

曲線の重なりを、平面の中で
シクラメンの花びらは、ただ一枚ずつ並んでいるのではなく、重なりや奥行きがあって、その立体感が魅力です。
そこで今回は、中央から左右へ向かうにつれて、線を二重、三重に重ねるようにして、平面の中でもこんもりした印象が出るように考えました。
実物そのままではなくても、見たときに“シクラメンらしい空気”が残る形になっていたらうれしいです。

冬のあいだ、ふと目に入る花として
特別に大きな出来事がなくても、冬の暮らしのなかで、ふと目に入って心を明るくしてくれる花があります。
シクラメンは、私にとってそんな花です。
華やかなのに騒がしくなく、身近なのに、ちゃんと美しい。
今年の12月は、そんな気持ちで、シクラメンを木の形に残しました。




