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Article: ライラック、花の形に残したくて

ライラック、花の形に残したくて

ベランダのライラックが、久しぶりに咲きました。

何年か前に植えてから、毎年気にはしていたのですが、
今年はやっと、ちゃんと花の姿に会えたような気がして、
それだけで少しうれしくなりました。

ライラックは、ぱっと咲いて終わる花というより、
気づいたら心の中に残っている花だと思います。
派手ではないのに、色も、形も、香りも、あとから静かに効いてくる。
今回はその感じを、木の形に残したくなりました。

少しだけ切って、部屋の中でも眺めた

せっかく咲いてくれたので、ほんの少しだけ切って、部屋にも飾りました。

外で見るのとはまた違って、近くで見ていると、
花の重なり方や、色の淡さや、枝先のやわらかな動きがよく分かります。
香りもふわっとしていて、強すぎないのに、ちゃんとそこにいる感じがします。

きれいだなと思うだけで終わらせたくなくて、
この印象をもう少し長く手元に残したいと思いました。
そういうとき、私は自然と、形にしてみたくなります。

花びらを見ていると、小さな違いが気になってくる

ライラックの花を近くで見ていると、同じように見えて、少しずつ違っていることに気づきます。

きれいに整って見えるのに、実はひとつひとつ表情が違う。
その自然のゆらぎが、私はとても好きです。

形を写すだけなら簡単なのかもしれませんが、
本当に残したいのは、その“少しずつ違う感じ”のほうでした。
だから今回は、ただ花の形を並べるのではなく、見ていて心が動いた部分を、図案の中に入れたいと思いました。

図案にすると、花との距離が少し変わる

実物の花を見ているときは、きれいだな、かわいいな、という気持ちが先に来ます。
でも、図案にしていくと、今度は線や余白や重なり方を考える時間になります。

どこを残して、どこを省くか。
どこまで整理しても、ライラックらしさが消えないか。

観察して、迷って、また見直して。
そうやって花と少しずつ距離を変えながら向き合っていると、
ただ見ているだけのときとは違う形で、その花のことを知っていく気がします。

小さな幸運も、そっと入れてみたかった

ライラックには、見つけると少しうれしくなるような、小さな特別感があります。

たくさんの花の中に、ふと違う表情を見つけること。
それは大げさな出来事ではないけれど、日々の中では案外大切な喜びだと思っています。

今回のデザインにも、そんな気分をそっと忍ばせました。
手に取った人があとから気づくくらいの、静かなうれしさとして残せたらいいなと思っています。

木になると、やさしさが少し落ち着く

ライラックの花はやわらかくて、どこか儚い印象があります。
それを木の形にすると、不思議と少し落ち着いた表情になります。

でも、硬くなりすぎず、きちんと花のやさしさは残しておきたい。
その加減を探るのが、今回いちばん楽しかったところかもしれません。

線の細さや抜き方、つなぎ方を考えながら、
木の温もりの中に、ライラックらしい軽さが残るように整えていきました。

花の季節が過ぎても、気配だけ残しておけたら

季節の花は、その時期にしか会えません。
だからこそ、その一瞬が強く心に残るのだと思います。

でも、木の形にしておくと、花そのものではなくても、
そのとき感じた気配を少しだけ持っていられる気がします。

鞄につけたり、机に置いたりして、ふと目に入ったときに、
あのライラック、きれいだったなと思い出せるくらいでちょうどいい。
私にとっての木型キーホルダーは、そういう季節の置き場所です。

また咲いたら、きっと今年とは少し違って見える

同じ花でも、その年ごとに見え方は少しずつ変わります。
今年の私は、ライラックのやさしさと、静かな特別感に惹かれました。

そうして手を動かしてできたこの形が、
誰かの日常にも、そっと小さな幸せを置いてくれたらうれしいです。

また来年、花が咲いたら。
そのときの私は、今年とは少し違うライラックを見つけるのだと思います。