すみれを見ると、新しい春のことを思い出す
4月のことを考えると、私はすみれを思い出します。
春の花はたくさんありますが、すみれには、にぎやかすぎない良さがあります。
小さくて、目立ちすぎなくて、でもちゃんと春の入口にいる花。
桜みたいに大きな景色を作る花ではないけれど、足元の近くで、静かに季節を知らせてくれる。
私の中では、すみれはそういう花です。


新しい門出の気分と、少し昔の記憶
4月は新しい出会いの季節です。
何かが始まりそうで、少し落ち着かなくて、でもどこか楽しみでもある。そんな気分を、すみれを見ると思い出します。
それに私は、すみれという言葉に個人的な記憶もあります。
子どもの頃にもらったものや、そのときのうれしさみたいなものが、押し入れの奥からふいに出てくる感じです。
だから今回は、花としてのすみれだけでなく、昔の気分に少し戻るような感じも、一緒に残したいと思いました。

漢字より、ひらがなのほうがしっくりきた
菫、と書くのもきれいです。
カタカナのスミレも、少しよそゆきの感じがして悪くありません。
でも、今回私の中でしっくりきたのは、ひらがなの「すみれ」でした。
音がやわらかくて、小さな花の感じに近い気がしたからです。
強く言い切るより、少し余白がある。
そんなところも、すみれらしいと思いました。

すみれは、静かな見た目なのに面白い
すみれのことを考えていて面白いなと思ったのは、種のことでした。
多くの植物が風や虫の力を借りるのに対して、すみれは自分で種の袋を弾けさせて飛ばす。
小さくておとなしい見た目なのに、そんな勢いを持っているところが、なんだか粋だなと思いました。
ただ、その「パンっと弾ける感じ」を、そのまま形にすることはできませんでした。
でも、その印象が残っていたからこそ、形を考える手つきが少し変わった気がします。



楕円形から、私なりのすみれになった
考えているうちに浮かんできたのは、水風船みたいな、少しむにっとした楕円形でした。
パンジーやビオラに比べると、すみれの花びらはもう少し細長い気がします。
まん丸で構成すると違う花に寄ってしまうけれど、楕円にすると、急にすみれらしくなっていきました。
さらに、一つの花がいいのか、三つ並んだほうがいいのかも悩みました。
一つだと静かで、三つだと木型らしいリズムが出る。どちらも捨てがたかったです。
そうしていくうちに、派手ではないけれど、どこか和っぽくて、やわらかい、私なりのすみれの形が見えてきました。
春の入口みたいな花として
すみれは、大きな声で春を連れてくる花ではありません。
でも、足元の近くで、ちゃんと季節が変わったことを知らせてくれます。
だから今回の木型も、目立ちすぎるものというより、ふとしたときに春を思い出せるものになっていたらいいなと思いました。
新しい出会いの季節に、少し昔の気分も連れてきてくれる。
すみれは、そんな花なのかもしれません。

今年の4月は、そんな気持ちで、すみれを作りました。
